高度経済成長期を迎えて以降、海外の材料を積極的に活用するなどの方法で日本の住宅は安価で作られやすくなりました。
人生で大きな買い物である住宅も大量生産大量廃棄という流れができてしまったために、他の工業製品と同様に手軽に購入(建設)できるようになりました。
しかし、本来であれば様々な世代が利用できる住宅でも住む人が愛着を持ち続けることができない場合には、住宅としての寿命が短くなってしまいます。
場合によっては20年程度で住むのが難しくなる可能性もあります。
このような住宅の大量生産大量廃棄という問題に対抗するために、伝統的な技術を使用して長寿命で住宅を作る「住まい塾」というグループがあります。
住まい塾とは
「住まい塾」は1983年に建築家である高橋修一氏を中心に“豊かな住まいを造るには、良い設計者、良い施工職人、良い建て主がいなければならない、どの一つがかけても豊かな住まいは実現しない”という基本的な考えのもと、この三者の信頼関係を基に、一丸となりスクラムワークで、豊かな住まいを具体的に造り続けようと、設計者、施主、様々な職人達が集まって、美しい空間のある住宅を作り上げることを目的として作られました。
家造りの実践集団として、より豊かに住み継がれる家づくりを目指し活動を続けられて、貴重で特別な住宅をじっくりとつくるだけではなく、確かな骨組みからなる長寿命の住宅をつくりあげることを目指しています。
美しくて過ごしやすいと感じる住宅は住む者にとっても家に対する愛着をもたらせます。
そのような住宅は、将来的にも子供や孫などへ大事に受け継いでいきたい住宅となることでしょう。
住まい塾の勉強会
住宅に関する様々な勉強会を定期開催しているのも「住まい塾」の特徴です。
一般の方向けには、豊かな住まいとはどのようなものなのかについて、定期的に勉強会を開催しています。
定期的に開催されている勉強会にこれから家を建てようとされている方も、頻繁に勉強をされています。
住まい塾の設計で建てられた方もスピーカーとしてこの勉強会に出席されています。
専門家向けには、職人達や施工業者、設計スタッフなどを対象として、現場で必要な知識の交換や実体験の周知など住宅に関わる様々なことについて、レベルアップできる内容を開催しています。
将来的に住宅設計を志している方には、設計者向けの養成塾を行っています。
専門的な教育を受けた以外にも、住宅が好きで設計に興味がある方のために幅広く門戸を広げています。
これらの座学に加えて、年に数回開催している見学会では、実際の工事現場を訪れてその技術を感じられます。
このような取り組みを通じて「住まい塾」では、貴重な知識や技術、経験に関して多くの方に広めることで現代人の生活にあった美しい住宅づくりを目指しているのです。
住まい塾の家づくり
がっしりとした基礎、太い通し柱と太い梁を持ち、それをつなぐ柱と梁は金物に頼らない伝統構法でしっかりと組み合わされています。
仕上げ剤には無垢の木や左官の塗材、石などの自然素材を使っています。
そして何よりも自由で質の高い空間を可能な限りコストを抑えながら、出来るだけ多くの人に豊かな空間持つ住宅に住んでもらいたいと願っています。
(住まい塾パンフレットより抜粋)
生活を通じて、四季を感じ取れる住宅にすることも「住まい塾」のこだわりです。
例えば、春夏秋冬で移り変わる庭園の風景や、キッチンから見える空の色合いなど自然を感じ取れる暮らしは、自然を身近に感じられる豊かな住まいになることでしょう。
素材を吟味し使うこと、すぐれた職人たちの手仕事の跡を残し、自然と一体となった豊かな住まいが「住まい塾」の家づくりです。
鳥居本の家(T邸)
現在、京都右京区嵯峨にある「鳥居本の家・T邸」が「住まい塾」の設計による建物として弊社で施工をさせていただいています。
ほぼ大工工事が終了間近であり、これから左官の塗りの工程に入ります。
この建物の特徴は、伝統的な建築(伝統構法や大工技術)をベースに内部の空間の自由さや、天井、壁とも塗り壁を主とした内装が特徴です。
防火地域ではないため、外部の建具についても枠もすべて木製です。
基礎については立上り幅が180もあり、基礎形状が特殊な納まりになっていて、水を切れるような二段の形状としてあります。
木軸についても部材が寸法が大きく柱の寸法も通し柱が150角、管柱は120角となっています。
通し柱は、基礎の上に柱勝ちで建てており、土台がそれに入れ込む形となって取付られています。
柱や桁にはみがき丸太が多用されており、これは弊社がいつも北山丸太(磨き丸太)を身近に使いたいという想いと共通した部分であり、建物の完成が楽しみです。
室内の和室にも面皮の柱や長押が取りつき、この住まいの特徴である数寄屋普請の風情を醸し出しています。
また、松材や広葉樹を多用していて、この建物の要所にあるべく納まっています。
誌上でしかお伝えできないのが残念ですが、当サイトで掲載させて頂きますので、ぜひご覧下さい。
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最終更新日:2020年10月13日投稿日:2020年5月22日