住まいと庭
住まいと庭(現代の庭と樹木)
古墳時代になると庭に近い形のものが作られ、飛鳥時代には石造物、石積みに加えて植栽が行われていたのではないかと推測されています。
江戸時代までの庭は中国・朝鮮半島を経由して伝わった文化の影響を受けて庭づくりが行われました。
庭に植えられる植物には時代ごとに特徴があり、鎌倉時代は梅、桜、カエデなどの落葉樹が好まれました。
室町時代はゴヨウマツ、カヤ、ヒノキ、カラマツなど針葉樹を中心に植樹し、安土桃山時代はアラカシ、ヒカサキなどの常緑樹が植えられました。
江戸時代になると目的に応じて植物を使い分けるようになります。
明治時代に入ると文明開化により西洋文化が流入し、街並みの様子が変わります。
貴族階級を中心に宮殿風の建物と洋館が流行し、庭の在り方も洋風になりました。
大正、昭和と時代を追うごとに一般家庭にも洋風住宅が広まり、建築にあった庭づくりが行われるようになります。
昔から樹木は庭に欠かせない存在で、現在の住宅にも木々や草花が植えられています。
庭師は庭造りをする職人です。
植栽は一見簡単そうに見えますが、庭に木を植えるだけでは成り立ちません。
住まいとの一体感を考え、心地良い住環境と景観を作り出すことが庭造りの醍醐味です。
木は生き物ですので成長します。
年数が経過すると木は高くなるだけでなく横に広がります。
将来的なビジョンを見据えて、建物とのバランスや敷地の広さを考えて木の種類と配置を決めていかなくてはなりません。
住まいが完成して引き渡し後は庭師が定期的に手入れを行うことになりますが、初期段階で庭全体の設計を適切に行うことが大切です。
樹木には様々な種類があり、針葉樹と広葉樹、落葉樹と常緑樹、高木と低木に大別されます。
針葉樹は針状のとがった形の葉を持ち、広葉樹は幅の広い葉をつけます。
落葉樹と常緑樹は庭に植える際に配置に気を付けなくてはなりません。
落葉樹は秋になると紅葉し、冬になると葉を落とします。
春になると新しい葉が生えてきますが、落ち葉の掃除をする必要があります。
常緑樹は年中緑色の葉をつけています。
あまり葉が落ちないため、通り沿いに植えたり目隠しとして使います。
高木と低木は名前のとおり、背丈が高くなる木と低い木です。
木が成長しすぎると敷地内に収まらなくなることがあります。
庭に植える樹木は成長後、住居に馴染みやすい種類を選ぶと良いでしょう。
住まいと庭(外構アプローチから庭)
外構とは建物外にある構造物です。
外構は門、車庫・カーポート、塀、柵などを指し、庭木や置物も含まれます。
外構にはクローズド外構とオープン外構があります。
クローズド外構は閉鎖的で門や高い塀、柵を使って空間を隔てます。
都心部に多く外部から内部を見えないようにするメリットがあります。
安全性が高く、プライバシーを守りやすい点でお勧めです。
敷地が狭い住宅でクローズド外構を取り入れると圧迫感があり窮屈になります。
オープン外構はクローズド外構と対照的に門や塀などで敷地の境界を囲わず開放的です。
見通しが良くのびのびとした空間を楽しめます。
施工工事の費用がリーズナブルで敷地を存分に生かせます。
オープン外構のデメリットは子どもの飛び出しと防犯セキュリティ面です。
クローズド外構では門や塀などが障壁となって、子どもが急に飛び出すのを防いでますが、オープン外構では遮るものがありません。
住まいが交通量の多い通りに面している場合は特に注意が必要です。
ペットを飼うときも同様に敷地から出やすくなります。
防犯セキュリティ面は防犯カメラ・センサーライトの設置に加えて、間取りに気を付ける必要があります。
通りから家の中が見えてしまわないように工夫しましょう。
クローズド外構、オープン外構ともにメリット、デメリットがあるので、住環境に合わせた選択が求められます。
外構部はリフォームできない部分が多くあり、将来性のある住まいになるように計画することが大切です。
そして、外構アプローチも合わせて意識しましょう。
外構アプローチとは敷地境界線・門から玄関までの通路です。
オープン外構とクローズド外構にも関係する話になりますが、家族構成と人数、車の有無、土地の高さ・勾配、道路の位置と幅などを考慮して決めましょう。
高齢者がご家族にいたり、老後の暮らしを考えるならスロープを設置すると便利です。
車庫・カーポートの設置は車の有無や所有台数に応じて決めましょう。
車の種類によって車高と幅が変わります。
車庫のサイズが合わなくて車が入らない事態になると空きスペースに車を駐車することになり外観が損なわれ、有効にスペースを活用できなくなります。
土地の高さ・勾配は敷地の境界線から玄関までのアクセス、水はけに関係します。
土地に高低差があると勾配のある階段をつけることになり、スロープの設置には敷地を要します。
水はけは土地の良し悪しがありますが、地面がぬかるみ水たまりもできると、雨天時に水や泥で汚れやすくなります。
すべりにくく水はけの良い素材を外構部に用いると良いでしょう。
さらに生活動線や防犯対策、プライバシー保護を意識することも大切です。
防犯の観点では見通しが悪い死角を作らないようにしましょう。
敷地が狭い場合、オープン外構を取り入れることが一般的です。
外構アプローチを考えたとき、門から住まいを見通せる状態になります。
オープン外構の場合は特にプライベート空間が見えないようにする工夫が必要です。
庭の使い方も外構アプローチの1つです。
個人で楽しむならガーデニングがお勧めです。
花壇や家庭菜園を作ると楽しめます。
大型の植物を中心とした植栽は慎重に行いましょう。
木が成長すると邪魔になったり、見通しが悪くなることがあります。
定期的なメンテナンスも必要です。
周辺環境と建物に調和し、維持管理できる庭造りに励みましょう。
住まいと庭(庭と植栽の役割) ※建物と住む人への関係
庭には木や草花などの植物が植えられています。
植栽にはどのような役割があるでしょうか。
身近に緑を置くと観賞的効果と機能的効果があります。
庭の植物を見て楽しむのは観賞的効果の1つです。
季節の花々や木を見ることで四季の移ろいを感じることができます。
春は芽吹きの季節で落葉樹は葉をつけます。
夏になると青々とした葉が生い茂り、秋は葉が色づきはじめます。
冬は葉が落ちて幹と枝だけになります。
草花も季節によって花を咲かせ、果実を実らせます。
1980年代から個人でも手軽にできるガーデニングが流行し、好きな植物を育てたり家庭菜園で果物・野菜の収穫を楽しむことも増えてきました。
緑を身近に置くことは人に安らぎを与える効果もあります。
都心部で公園づくりや街の緑地化を進める理由は環境面に加えて、人の暮らしに緑が欠かせない存在であることも挙げられます。
緑は日々の生活で受けるストレスを軽減し、癒す効果があることも実証されています。
植栽には様々な機能的効果もあります。
木を植えることで直射日光をさえぎり日差しを和らげることができたり、防風効果を得られます。
定期的に適切な剪定を行うと風通しが良くなり、快適な環境になります。
植栽には目隠し効果もあります。
敷地と道路に面する境界周辺に樹木を植えることでプライバシー保護と防犯効果を期待できます。
落葉樹を植えると冬に葉を落とすため、目隠し効果を期待するなら常緑樹がお勧めです。
住まいと庭(庭と建物の一体化)
住まい設計をする際に建物と外構部分は別個で考えられがちですが、外構は住まいの一部分です。
大規模なリフォームは難しいため、建物と同様に綿密な設計計画を立てないと後に後悔します。
特に庭は個人空間を楽しめるスペースです。
住宅が過密化する中で敷地を最大限に活かすにはどうすれば良いか、将来的なビジョンを想定して決めましょう。
庭と建物を別々に設計すると土地を活かしきれないことが多々あります。
どんな暮らしをしてみたいか一貫したコンセプトを持ち、住宅設計に反映し実現させましょう。
敷地全体の雰囲気を統一し、庭と建物の一体化を行うことが大切です。
マイホームを持つ際は建物の建築設計に携わるハウスメーカー、工務店、設計事務所に加えて、外構や植栽を担当する会社にもこだわってください。
最終更新日:2020年3月4日投稿日:2019年11月1日