台所・キッチンの歴史 おくどさん~ブロックキッチン、システムキッチンへ
キッチンの由来はラテン語のco-quinaで、火を使う場所を意味します。
約200万年前の旧石器時代には火が用いられ、食材を直接焼いたり、焼き石をフライパンのように用いて食材を加熱していました。
新石器時代になると、土器を使って湯を沸かしたり、食材を煮炊きするようになります。
火の使用は現在ほど盛んでなく、火は灯りや暖としての役割を担っていました。
古墳時代の中盤に入ると加熱用の調理器具としてかまどを使うようになります。
かまどの歴史は長く戦後まで利用されていました。
台所は平安時代頃から使われ始めた言葉です。
台盤所という場所が由来で、内裏や貴族の家には食事を行う部屋がありました。
当時は現在のような台所の機能はなく、調理されたおかずやごはんを台盤所で配膳して食事をしていました。
調理は別の棟で行われ、調理場は大炊殿(おおいどの)、厨(くりや)と呼ばれました。
身分が高いほど独立した部屋を所有していた時代で、台盤所がある家は裕福であったと言えます。
食事情は地域や住環境、身分によって異なり、かまど、囲炉裏が主な調理設備でした。
囲炉裏は建物の中心部に設けられ、灯りや暖房の役割もしていました。
大正時代になると台所事情を改善する動きが見られましたが、農村部でのライフラインの確立まで及びませんでした。
戦後までは一般住宅に床上と土間空間があり、かまどと七輪が使用されてきました。
地域によっては囲炉裏を使っているところもあります。
戦後になると電気・ガス・水道が普及し、セパレート型のステンレス流し台(ブロックキッチンは流し台、調理台、コンロ台がそれぞれが独立しそれらを並べたもの)が登場し、
そしてそれがシステムキッチンへと変化してきました。
システムキッチンは台所設備がセパレートされずに一体化したものをいいます。
フルオーダーの注文を具現したものがシステムキッチンです。
流し台、調理台、コンロ台、収納棚がひとまとまりで構成されています。
意匠的にも機能的にも使いやすく設計されています。
現在のシステムキッチンと呼ばれているもののほとんどはセミオーダーでメーカーの種々の既成のものが用意されています。
ただ、ブロックキッチンのように部分ごとに修理や取替えはできません。
ブロックキッチンの利点は修理や取替が簡易にできることから、間取りの変更もしやすく事務所、テナントで多く採用されています。
おくどさんの特徴
おくどさんは京都、香川の高松などで使われる方言です。
かまど、かまどのある場所の守り神を意味し、へっついと呼ばれることもあります。
現在の調理設備はガスコンロが主流で、かまどを見る機会が少なくなりましたが、京町家や古民家の一部に残っています。
かまどは食べ物を加熱する調理設備で、5世紀頃に朝鮮半島から伝わってきました。
かまどの歴史は長く、ガス、水道、電気が整備されていなかった戦後まで使われました。
一部の地域では囲炉裏を使い、かまどと囲炉裏を併用したところもあります。
かまどで調理を行うには井戸で水を汲み、薪で火を起こす作業が必要です。
乾燥させた薪を準備し、調理時に火吹き竹で火力を調整するなどの手間がかかります。
現在は炊飯ジャーが普及しているため、かまどでご飯を炊くことはほとんどなくなりました。
かまど炊きのごはんは吸水と火加減、蒸らしが必要でひと手間かかりますが、お米全体に水分がわたることで甘みが出て美味しく炊き上がります。
数が減りつつあるかまどですが、今でも神事や伝統行事でお湯を沸かす際にかまどを用いることがあります。
キッチンの種類と特徴
キッチンのモデルチェンジは頻繁にあり、様々な機能を持ったキッチンが登場しています。
システムキッチンは大別してオープンタイプとクローズドタイプがあります。
オープンキッチンは対面式とも呼ばれ、ダイニングやリビングの様子を見れることから子育て世代を中心に人気が上昇しています。
オープンキッチンは開放的なため、ニオイや湿気が隣接する部屋に流れ込むデメリットがあります。
クローズドキッチンはキッチンスペースが閉鎖的です。
におい移りの心配がなく、調理に集中できるメリットがあります。
システムキッチンにはアイランド型、ペニンシュラ型、I字型、L字型などがあります。
アイランド型は台所の中心部に独立した調理スペースがあります。
調理スペースが広く、家族や来客と調理を楽しむことができます。
アイランド型は排煙装置を完備し、同室に窓を設ける必要があります。
また、スペースに余裕が必要で、油はねと汚れ掃除が大変です。
ペニンシュラ型は一方が壁に面した解放感のあるキッチンです。
オープンキッチンに適していますが、収納スペースを取りにくい点がデメリットです。
I字型は直線状に台所機能を集結させたキッチンです。
コンパクトなキッチンで狭いスペースを有効に活用できます。
L字型は台所機能の並び方がL字になることからついた名称です。
やや広めのスペースが必要になります。
キッチンはデザイン性や最新システムに注目しがちですが、使いやすさやメンテナンスが容易なことが必要とされます。
これからのキッチンは(意匠と機能性)
キッチンの在り方は多様性があり、住まいと利用者のニーズに沿った選択が大切です。
キッチンは設備機器の利便性に加えて、採光や換気についても注目しましょう。
まず、キッチンのシステムは年々グレードアップしています。
新モデルのキッチンに目を奪われそうになりますが、理想の住まいに必要な設備を備えたキッチンであるか吟味すると良いでしょう。
シンクは幅と高さが重要です。
台所での作業は立ち仕事です。
シンクの位置がおへそのあたりに来ると疲れにくい姿勢で作業を進めることができます。
壁面素材は外観に加えて、掃除の際に手間がかからないものを選ぶと良いでしょう。
キッチンパネルやステンレスは掃除をしやすく便利です。
タイル製のキッチンは人気がありますが、凹凸があり目詰まりしやすく掃除に手間がかかります。
煉瓦、テラコッタは油を吸着して汚れるおそれがあります。
キッチンではにおいと煙が発生するので、換気扇、排煙装置も大切です。
排気機能に加えて、メンテナンスのしやすさも選ぶポイントになります。
キッチンには様々な種類と配置がありますが、建築の意匠と使いやすさを踏まえて選びましょう。
オープンキッチンはダイニング、リビングと隣接します。
においが部屋につきやすく、壁が油染みで汚れる弊害があります。
換気扇の取り付けだけでは不十分なので、キッチンには窓が必要です。
間取りは外に面した箇所が優先されます。
窓があると風通しが良くなり、光が入って明るく快適な空間になります。
キッチンの熱源についても検討の余地があります。
これまではガスの使用が一般的でしたが、オール電化住宅も増えています。
IHクッキングヒーター、エコキュートの導入によって、温室効果ガスの削減や光熱費の節約を図ることも可能です。
これからのキッチンはモデルチェンジが繰り返し行われて、新モデルのキッチンが続々と登場することが予想されます。
建築意匠に加えてライフスタイルに合った機能性のあるキッチンを選択することが大切です。
最終更新日:2020年3月4日投稿日:2019年5月27日