コンクリート打ち放しの歴史
コンクリート打ち放しを建築デザインとして用いたのはフランスの建築家オーギュスト・ペレが起源です。
鉄筋コンクリートをレンガ壁に結合するコタンサンの工法を応用してパリでアパートや劇場を建てたのち、
1923年にル・ナンシーの教会の柱部分にコンクリート打ち放しの工法を施しました。
壁体としてコンクリート打ち放しが初めて使われたのは、その翌年の1924年のことです。
日本でアントニン・レーモンドが自邸を建てたのが世界初と言われています。
一時はコンクリート打ち放しに期待が寄せられましたが、当初は直線的な作風に人気が集まり、コンクリート打ち放しの趣向はあまり浸透しませんでした。
コンクリート打ち放しの意匠が認められ始めたのは、第二次世界大戦以降です。
コンクリートは本来、可塑性が高く自由な建築表現をできる素材です。
ル・コルビュジエやルイス・I・カーンなどの巨匠たちがダイナミックな表現性を示し、その可能性を高めました。
日本では丹下健三、前川国男らが影響を受けて、コンクリート打ち放しの建造物が浸透します。
丹下健三は戦後から高度経済成長期にかけて活躍した建築家で、「世界のタンゲ」と呼ばれています。
広島ピースセンター、倉敷市庁舎、香川県庁舎、旧東京都庁など数多くの建築物を手掛けました。
広島平和記念資料館の設計も丹下健三によるもので、戦争からの復興に対する力強さと思いがデザインに表現されています。
近年コンクリート打ち放しは一般住宅やデザイナーズマンションなどでも需要が高まっています。
コンクリート建物の歴史
コンクリートは現代の建築になくてはならない素材の1つです。
その歴史は古くからあり、最古は紀元前7000年前後だと言われています。
イスラエルの要塞都市でコンクリートでできた床が発見されました。
紀元1世紀には古代ローマでコンクリートが通常の建材として使われています。
ヴェスビオス火山の近くで採れた火山灰、石灰、軽石などを混ぜたものを水中で硬化させる製法で作り、パンテオン、コロッセオの基礎などとして使用していました。
現在のコンクリートとは異なるものですが、当時の建造物が今も残っていることから、耐久性に優れた素材であることが分かります。
今日のようなコンクリートが使われ始めたのは18世紀末頃のことです。
イギリスのジョン・スミートンがコンクリートに水硬性石灰を用いることを発案し、改良が加えられることで現在の形へと変移をたどりました。
日本でのコンクリートの歴史はまだ浅く約100年です。
コンクリートが日本に入ってきたのは明治時代と言われています。
石灰石が産出する鉱山資源に恵まれていることから、自給自足でコンクリートを生成することができました。
戦後から高度経済成長の時期にかけてコンクリート建物が多く普及し、現在もコンクリートは欠かせない素材になっています。
日本の建築家・安藤忠雄が設計する建物
日本の建築家・安藤忠雄は打ち放しコンクリートを基調とする建築物を多く手がけてきました。
安藤忠雄はプロボクサーという経歴を持ちながらも、ル・コルビュジエ、ルイス・I・カーンの影響を受けて独学で建築を学びました。
インテリア・建築に携わる仕事と度々の海外渡航で培われた経験をもとに、ストイックにコンクリート建築と向かい合い取り組んできた特異な建築家です。
一般的にコンクリートは美しさがなく、安価で建物の基礎として目立たない裏方のような存在として扱われています。
安藤忠雄はコンクリートが秘めた可能性に気づき、コンクリート建築を通じて創造力の限界を常に求めてきました。
無機質でありながら自由に造形でき、多種多様で豊かな表現を見せるコンクリートは建築造形の本質であり、建築家の挑戦精神を揺さぶるものです。
コンクリートは製造過程で品質が変わり、建築家の作風が表せる素材でもあります。
安藤忠雄は現代建築の素材としてコンクリートを用いながら日本人の感性に添える建築を目指しました。
住吉の長屋を始めとして光の教会、水の教会、姫路文学館などの設計にも携わっています。
ファッションデザイナーで有名なコシノヒロコ氏の邸宅を手がけたことでも一躍有名になりました。
国外でも活躍があり、アメリカのフォートワース現代美術館、ドイツのランゲン美術館も設計しています。
現代のRC造の建物の特徴
RC造とはReinforced Concrete Constructionの略称で、鉄筋コンクリート構造を意味します。
1867年フランスの造園家ジョセフ・モニエが発明しました。
モニエが植木鉢を作る際に鉄筋とコンクリートを用いたところ、強固で頑丈な素材になったことを発見したのが起源です。
日本に現存する最古の鉄筋コンクリートの建造物は、1911年に建てられた三井物産横浜ビルです。
鉄筋コンクリートはコンクリートと鉄筋の短所を互いに補完しあっているため、強度としなやかさを持ち合わせています。
鉄筋コンクリートは優れている点が多く、デザイン性が高く建築物の可能性を広げる素材です。
防火性と遮音性が高いところも魅力的です。
耐用年数は約60年で長期建築物にも適しています。
RC造の弱点は重量とクラックです。
鉄筋コンクリートはどうしても重くなるため、地盤が弱い場所での建築に適していません。
また、施工時に不備があったり、地震などの外部的な要因があるとひび割れを起こしやすくなります。
鉄筋コンクリートは高層建築や大規模な設計には適していませんが、一般住宅や階数が少ない小規模なマンションの建設に厚い信頼をおける素材です。
最終更新日:2020年3月4日投稿日:2018年10月12日