プレファブリケ―ションとは
戦国時代に木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)が、岐阜長良川の墨俣に築いた墨俣城(別名一夜城)をご存知でしょうか。
長良川に突如としてあらわれた(築かれた)一夜城が墨俣城です。
これもプレファブリケーションで造られたというのは有名な逸話です。
プレファブリケーションとは、建物の部材をあらかじめ工場で製作・加工し、建築現場でその部材を組み立てて建物をつくることです。
「プレハブ」という略称で呼ばれることもあります。
プレファブリケーションの歴史は18世紀の植民地時代に始まり、植民地に住宅や公共性の高い建物を建てるためにヨーロッパ各地で広まりました。
当時のプレファブリケーションは、木材をカットしたものを船で植民地まで輸送し、組み立てていました。
日本へプレハブ建築が流入したのはそれからもっと先の1940年頃です。
ドイツの乾式組立構造の影響を受けて、日本の建築家が設計に取り組みました。
木製のパネル材を作り、基礎工事をした上につなぎ材を置いて、床パネル、壁パネルなどの木製パネルを組み立てるものでした。
その時期はちょうど戦後で住宅不足を解消するために大量生産化が進み、建材を工場生産するようになりました。
戦争の影響を受けて建物の耐久性や不燃性を追求したコンクリートのプレハブの開発も合わせて進みました。
本格的にプレハブ建築がしたのはそれから約20年後の1960年以降です。
プレハブと言えば、仮設住宅や仮設事務所など臨時用の建物を想像される方も多いと思いますが、工場、住宅、学校、倉庫、飲食店などにもプレハブは起用されています。
2017年に建てられた新築住宅は約96万戸で、そのうちの約14万戸はプレハブ住宅で、全体の14.4%のシェアを占めています。
新しく建てられた住宅の7戸に1戸がプレハブ住宅で、プレファブリケーションは私たちの生活に欠かせない存在です。
プレファブリケーションの利点、欠点
プレファブリケーションは通常の建築物と同様に利点と欠点があります。
まず、利点からお話しすると、プレファブリケーションは構築システムそのものに無駄が少ないことが挙げられます。
プレファブリケーションはあらかじめ工場で建材が加工されて、小規模な組立てを行った状態で施工されます。
そのため、建材の品質にばらつきがなく安定しています。
部品を組立てて必要な加工をおこなうだけなので工期も短く済みます。
伝統的な建築では建物の良し悪しは職人さんの技術に大きく影響されますが、プレファブリケーションの場合、
技術力はさほど問われないため、精度が高い建物に仕上がるところもメリットです。
工期の日数が短期間で建材のコストも明確なので、費用面も安く収まります。
また、近隣の人が工事の騒音などに悩まされることもほとんどありません。
プレファブリケーションの唯一の欠点は融通があまり利かないことです。
建材が規格化されているため、建物の外観や内装、間取りなどを自由にデザインすることができません。
建築にこだわりを持たれる方には不向きです。
また、このような理由でリフォームや増改築も思い通りにできない点もデメリットとして挙げられます。
住宅におけるプレハブ化
日本のプレハブ住宅は1940年頃から設計の取組みが始まり、1960年あたりに普及し始めました。
プレハブとひとことで言っても、工法や建材は様々です。
戸建て住宅向けのプレハブは構造と建材で大きく分けると4種類あり、木質系プレハブ住宅、鉄鋼系プレハブ住宅、ユニット系プレハブ住宅、コンクリート系プレハブ住宅に大別することができます。
どのプレハブも建材を工場生産し、現場に運搬して施工する過程は同じです。
それぞれ特徴やメリットが異なるので簡単にご紹介します。
- 木質系プレハブ住宅
壁、床、柱、梁(はり)など主要な構造部分が木材パネルで作られています。
梁とは床や屋根の荷重を柱に伝える横架材です。
材質が木のため、防腐加工や白蟻予防をして組み立てられます。 - 鉄鋼系プレハブ住宅
鉄鋼系プレハブは軽量鉄骨で作られた壁パネルや柱、梁などを組み立てて作る住宅です。
工場で鋼材をカット・穴あけした建材に防錆加工を施しています。
断熱効果や遮音性が高く、耐震性もあります。 - ユニット系プレハブ住宅
ユニット系プレハブ住宅では建材の作成だけでなく、床、壁、天井、キッチン、浴室、トイレなどの取り付けまで工場でおこないます。
ほとんど工場で作業をおこない、大型トラックで現場まで建材を運搬します。
組み立てがスムーズで、基礎工事を除くと工事が1日ほどで済むこともあります。 - コンクリート系プレハブ
工場で生産されたコンクリートパネルが主要な建材です。
基礎工事をした後にコンクリ―トパネルの床、壁、屋根などを組み立てます。
コンクリート系プレハブは耐久性、耐火性があります。
このコンクリートパネルを用いたプレハブは、戸建てだけでなく、公営住宅や民間マンションにも応用されています。
プレハブ化の未来(今後)
プレハブ住宅は過去10年の新築住宅うち十数パーセントのシェアを占めています。
プレハブ住宅は品質が高く施工期間が短いことから、いろんな用途にも使われています。
遮音性と耐久性もあり、多様なライフスタイルに合わせた居住環境を提供することが期待されます。
また、プレハブのデザイン性についても様々な試みがおこなわれています。
モダンなスタイルや和風建築、リフォームに対応できるプレハブなど既存のイメージを覆すものが少しずつ増えています。
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最終更新日:2020年3月4日投稿日:2018年9月14日