新築の家づくりでは住む人の個性を表すように、空間の豊かさや意匠等そして吟味された素材が求められます。
京都では、昔から畳や建具は、京間の間取りにあわしたものが使われていて、ある意味使い廻し再利用をされてきました。
近年においてもそれらの「古材」や「古建具」を一部使うことがあります。
それらを使うことによって、現代的なデザインだけでは得られない風情や温かみが醸し出されます。
古材や古建具には、長い年月を重ねることで生まれた独特の風合いがあり、昔ながら意匠や職人の技術が味わえます。
また古材の優れた性質も、建築においては非常に大きなメリットになります。
このコラムでは、古材や古建具の魅力と、それを活用した住まいづくりについて記述します。
●京都の古材、古建具
京都では日本の伝統的な住まいの建築様式(町家)が長く受け継がれています。
全国的に見ても歴史の深い町であり、観光客にとっては日本独自の美意識を感じさせる場所だと言えるでしょう。
そのような京都の家づくりにおいては、実は古材や古建具が多く使われています。
ここでは、京都の古材や古建具の特徴や性質について紹介します。
・古材とは
古材とは、古民家や町家や歴史的建物の解体時に取り出されて、再利用される木材のことです。
一般的には、柱や梁等を指します。
乾燥が進み圧縮強度が高くなるため性能が安定しています。
また含水率が低いために、木材が収縮や変形するリスクも少ないです。
古材はただ古いというだけではなく、強度も落ちることなく安定していて、新築の建物にも使いやすい素材です。
優れた強度を活かせるような梁や柱など住まいの構造上で非常に重要な部分にも向いた素材です。
古材は解体業者によって取り出された後、品質が確認され、安全に使用できると判断されたものだけが再利用されています。
・古建具とは
古建具とは、古い家屋で使用されていた建具のことです。
建具とは、建築物の開口部に取り付けられる戸や窓、障子、ふすまなどです。
古民家が建築された当時は、ベニヤ板やビニールクロスが存在せず、大工や職人が一つ一つ手作業で製作していました。
古建具には、高い実用性と機能性その時代の職人の技術を駆使して作られた、美術的な要素の両方が備わっています。
特に欄間などは、精巧な木彫りや組子細工が施されており、その美しさは工芸品としても評価されています。
そのため古建具は美しいだけではなく、歴史を経たものが持つ「侘び」、「さび」を感じさせる素材でもあります。
和の風情に持ってこいの素材でもあり、インテリアとしても活用しやすいのです。
・京都の風情と歴史が感じられる素材
京都の古材や古建具は、長い年月をかけて京都の風土や文化の中で育まれた素材です。
どちらも新築の建物に取り入れることで、住まいに京都らしい風情と気品が加わります。
古材や古建具を活用することで、まるで京都の古い町家の一部を自宅に取り込んだような趣ある空間が作り出されます。
●日本の古材等の文化
日本では、古材の再利用は単なる資源の節約以上に、文化的・精神的な価値が深く根付いています。
古材を活用する文化は、長い歴史を通じて育まれており、現代でも時代を超えて受け継がれています。
ここでは、日本における古材の文化的な背景や価値観について紹介します。
・「もったいない」という考え方
日本では古くから「もったいない」という精神が日常生活の中で大切に扱われてきました。
これは資源を大切にして、使えるものはできる限り再利用するという考え方です。
そのため自然の恵みを尊重して伐採された木を余すことなく活用するという姿勢が伝統的に根付いています。
・職人の知恵や技術が込められた古材や古建具
現代社会では機械化が進んでおり、大量生産による画一的な素材が作られています。
しかし古材や古建具の職人達は、一つ一つ異なる材料の特性を見極めた上で、その素材がもつ強さや美しさを最大限に引き出すような様々な工夫を凝らしてきました。
たとえば「木組み」や「組子」は、文化財などにも使用されている伝統的な技法です。
古材や古建具にはこのような技法が多く使用されており、当時の職人の知恵や技術が豊富に込められています。
昔は、木材料が高くて工賃が安かったということもあり手間をかけたものが多く残っています。
・伝統的な技術を保護するために
古材や古建具を再利用するためには、慎重にその性能を見極めなければなりません。
場合によっては経年劣化の影響により、新しく修繕や加工が必要になるかもしれないからです。
古材や古建具を再利用する文化は、単に資源の節約や環境保護だけではなく、現代の職人達にとっても多くのメリットがあります。
貴重な古材や古建具を取り扱うことで、伝統的な技術の保存や技術を承継する大切な機会にもなります。
●新築の建物に古材、古建具を使う
新築の建物は、モダンで洗練された機能的なデザインが好まれがちです。
しかし実際に住み始めてみると、画一的な素材による無機質な冷たさを感じることもあります。
そんな新築住宅に古材や古建具を取り入れてみると、自然がもつ温もりや伝統的な風合いが加わって、住人が心地よく感じられる空間を作り上げることが可能になります。
只、全てをこれらを使うというよりは、やはり全体的なまとまりの中での一部使用がいいと思います。
ここでは新築住宅に古材や古建具を使用する場合のメリットを紹介します。
・古材の梁や柱を使ったリビング
リビングに古材の梁を取り入れてみると、空間に木の重厚感、存在感や木の温かみが広がり、新築住宅特有の無機質な印象を和らげます。
とくに古材の梁は含水率が低いため、木材が反ったり割れたりするリスクが少なく、リビングのような広い空間での使用に向いた素材です。
また古材の風合いを楽しみたい方は、手触り、足触りのある柱や地板等に使用してみるとよいでしょう。
古材の表面には、自然にできた傷や色合いの変化があり、年月を経た味わいが感じられます。
ステイン塗装(古色)とは違った深みが感じられます。
・古建具で日本の風情を取り入れる
古建具を使って間仕切りやドアを作ってみると、古建具がもつ機能性や美しさを感じられます。
たとえば、障子やふすまを使って光や風を取り入れることで、季節を感じることができる空間が実現します。
職人技が光る古建具には、繊細な細工が施されてあるものがあり、その美しさは家全体に上品な印象を与えます。
和の趣をプラスできるため、異質な場所にもあえて使用してみると空間のアクセントとしての古建具の魅力がより引き立ちます。
・エコロジーな住まいづくり
古材や古建具の再利用は、環境に優しい住まいづくりに大きく貢献します。
古材はすでに自然に乾燥して安定した性能があるため、乾燥に必要なエネルギー消費を抑えて、新しい木材の伐採を減らしてくれます。
また木材は、断熱性能が高いため、住居としてもエネルギー消費を抑えやすくなります。
古建具の障子や格子戸などは、通気性を保ちながらも室内の温度のコントロールに一役かいます。
自然の風を室内へと取り入れて、冷暖房エネルギーの削減に貢献します。
窓の内側に設えられた障子は、自然光を柔らかく拡散させることで、日中の照明を減らして、省エネルギーでエコロジーな住まいづくりをサポートします。
このように古材や古建具を新築住宅に活用することで、単なる再利用の資材というだけではなく
古材や古建具による歴史文化を伝えて、現代において意匠と実用とが重ね合った快適な住まいを目指すことができます。
新築住宅に古材や古建具を取り入れたい方、風情のある住まいをご検討中の方は、ぜひ私たちにご相談ください。
伝統と現代が融合した住まいづくりをご提案いたします。
最終更新日:2024年10月11日投稿日:2024年10月11日