杣人工房について
杣人工房が誕生
京都市では「森と里山との共生・木のある暮らし」を提案・普及する事業「京の山 杣人工房事業」が今から15年前に設立されました。
このことにより京都市内産木材の需要を拡大するとともに、京都市の森林・林業の活性化を図っています。
京北地区が京都市・右京区に編入されたことにより、京都市が抱える山が増えたこともこの事業設立の一因です。
「杣人(そまびと)」とは、山や木に対し優れた知識を持ち、その知識から山の木を伐り生活の糧にする人々のこと。
つまり昔から山や里山を守って生きてきた人々に対する尊敬の意味を含めた言葉です。
そんな京都市内産木材を使ったモデル施設杣人工房は現在、各行政区に一工房づずつ設けられ、現在合計で9工房となっています。
杣人工房 嵯峨木のこゝろ「風」と活動1
京都市右京区嵯峨釈迦堂門前瀬戸川町に杣人工房『嵯峨木のこゝろ「風」』があります。
こちらは京都産の木材、北山杉を生かした手作り住宅を作っている工務店が母体の工房です。
北山杉は室町時代から作られはじめ約600年の歴史を持ち、「京都府伝統工芸品」や「京都市伝統産業品」に指定されています。
光沢があり滑らかな材質で干割れが起こりにくいとも言われていて、桂離宮や修学院離宮など伝統的な建築物にも使用されています。
北山杉を生かした住宅は、自然が溢れるとても暖かみのあるものです。
そんな嵯峨木のこゝろ「風」は住宅作りだけでなく、木の魅力を後世に伝えるためのさまざまな取り組みをおこなっています。
その中の一つが子供達に木の魅力を伝える「木育」です。
木育は新しい教育方法として注目されているものであり、北海道が主導して始められました。
子供の五感に働きかける木を見て、触れて、感じる、木のおもちゃは、感情豊かな心の発達を促します。
自分たちが生まれ育った京都の山で育った北山杉に触れることは、「木育」であり、それが「住育」へとつながり、住まいへの関心やひいては京都の文化を知ることにもつながります。
活動2
京都市右京区の杣人工房 嵯峨木のこゝろ「風」では、木育の他にも活動をおこなっています。
地元の山や木のことをもっと知ってもらおうと京北地区で「里山交流会―植林」として毎年杉、桧の苗約500本を植林しています。
植林の後には地元の林業家を交えて、京北銘協で地元の鮎を食べたり、鹿肉のBBQをしたり楽しんでいます。
植林された杉や桧の苗を食べて枯らしてしまう獣害である鹿を駆除したものをいただきます。
せっかく植林したのが数年で鹿に荒らされ枯れた苗を見るのは林業家にとってつらいことですので、駆除した鹿を上手く利用するのは良い試みだと評判です。
夏には当社竹内工務店の倉庫で「親子木工教室」を開催しています。
ここでは自由工作として参加者それぞれが好きな作品を作ります。
地元産の杉、桧を始め国産材の広葉樹の端材を選んで、一部の加工は大工さんや木工家、建築士のサポートをしてもらい、あとは親子で自由に作ります。
思い思いの作品でそれぞれ違ったものが出来上がるので大変好評で、毎年参加される方も大勢おられます。
「風」では1Fを木の展示室としていろいろな木材の展示をして見比べができるようにしています。
さまざまな木の特性を理解し、それを体感できるようにこの工房は作られています。
木の素材を存分に活かした家具や椅子もあり、京都の山で育った北山杉の良さも感じることができます。
それは子供だけでなく大人も楽しめる空間であり、北山杉の良さを改めて感じることができるでしょう。
その工房がきっかけとなり、嵯峨木のこゝろ「風」で北山杉を使った住宅を建てる方も多くいらっしゃるようです。
京都市が掲げたこの事業が、京都で生きる人々の考えを良い方向に向けていると言って良いのではないでしょうか。
これからの杣人工房事業は山と町を結ぶこと、そして地元の木の消費を促すこと
京都市の各行政区に一工房づずつ構えている杣人工房。
この杣人工房事業は「山」と「町」を結ぶことができるのではないか、と考えられています。
これまで山はどこか町とはかけ離れた自然のものとのイメージが強かったのですが、この事業により人々が生きる町と山の距離感が近くなったのは事実です。
京都市を担う子供達に山の大切さ、木の良さを伝えること。
そして山と共に生きていく道を教えることが出来る事業ではないかと思います。
そういった意味でも、これからの杣人工房事業はこれまで以上に山と町を結ぶことが期待されています。
そして山の手入れや山が健全に維持されるように地元産材の活用、提案を通じて一般の方に普通に使っていただけるように情報発信を続けています。
最終更新日:2021年3月3日投稿日:2021年3月3日