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京の木づかいー地産地消の家づくり

家づくりをするためには、さまざまな用途のために木材を使用します。
特に木造住宅に関して使用される木材は、国産木材と輸入木材とにわけられますが、現在では輸入木材で住まいづくりをすることがほとんどです。
しかし国産木材を使った家づくりには、さまざまなメリットがあるのをご存じでしょうか。
ここでは国産木材、とくに地産地消の家づくりにかかせない地域材について紹介します。

●地産地消の意味とは

「地産地消」とは、とくに農作物においては地元産の食材を積極的に使おうという取り組みのことを言います。
地元の人が地元産の食材を使うと、顔が見える生産者(生産履歴が明確な)による新鮮な食材が活用しやすくなります。
これは木材についても同様です。
国土の7割を森林が占めている日本において、地元産の木を使うことによるメリットは多く、日本の林業を活性化させるために欠かせない取り組みだと考えられています。

●近くの木を使う

木材の地産地消は、「地産材」や「地域材」と呼ばれることもあります。
住まいに近い場所で代採された木材のことをいい、とくに木材を産出した場所と同じ場所の建物に使うことを意味する「地材地建」という言葉も生まれました。
ここでは建設地の近くにある木材を使うメリットについて紹介します。

・地域経済の活性化
森林を育てて伐採した木材を加工して住まいづくりに活用する流れには、さまざまな企業が関わります。
林業や加工業、運送業、建設業といったその地域の企業が活躍することで雇用が生まれて経済の活性化が起こりやすくなります。

・森林の循環に貢献
森林を何も手入れをしなければ、環境が悪化して土砂災害をはじめとした災害等が起こりやすくなります。
身近な木材を使うようにすると、質の良い木材を作るための枝打ちや下草の手入れをすることにより、森の中に光が届きやすくする間伐などの定期的な伐採につながり、健全な森林の育成と循環に寄与します。

・木材の利用促進につながる
地域材を積極的に用いることで輸送時の負担を減らせます。
また、工期が短縮しやすくなると多くの建築物に対応しやすくなるため、木材の利用促進につながります。
さらに地域材を作るときに出る廃材や丸太などは、家具やベンチなどへの利用が可能となるため、日常的に木材に触れあう機会も増えることでしょう。
先日の「ポツンと一軒家」でこんな大きな木材が使われていますが、どこから運びましたかと聞いていた人に、住人はこれらは裏山の木ですと答えられていました。

・風土に合った住まいづくりができる
地域材は、その土地の風土に合わせて環境に適応して生長した木材です。
そのため地域材には寒い地方に強い木材や、高温多湿に強い木材などさまざまな特徴が見られます。
同じ地方にある木材を使って住まいづくりをすると、それだけその地方の気候や風土に合った住まいづくりがしやすくなります。

・輸送費用や環境負荷を抑えられる
環境負荷をあらわす指標には、木材の輸送量と輸送距離によって算出される「ウッドマイレージ」という考え方があります。
このウッドマイレージを用いると二酸化炭素の排出量が求められるようになるため、木材輸送における代表的な指標として使われています。

一般社団法人ウッドマイルズフォーラムのデータ(※1)によると、建材を輸送する過程で排出される二酸化炭素の量は、一般的な木造住宅で約1300kg、すべて国産木材にした場合は約500kg、すべて地域材にしたときには約200kgになるそうです。
つまり地域材を活用することで、輸送費用だけではなく環境負荷の軽減も期待できるようになるのです。

昔は、現代社会のように運搬技術が発展しておらず、当たり前のように地産地消の木材が使われていました。
住まいを建てるために、近くの山から木を切って調達していたのです。
しかし運搬技術が発達してくると、どこにある木材も自由に選べるようになり、木材の地産地消がおこなわれなくなっていきました。

●なぜ近くの木が使われなくなったのか

地産地消の木材を使うのが難しくなった理由には、とくに国産木材と輸入木材についての歴史が関係しています。
ここでは国産木材が使われにくくなった代表的な理由を紹介します。

・需要に対応しきれなかった
過去の歴史を振り返ると、一般人の生活が大きく変わったことといえば、やはり戦争の影響が大きいといえるでしょう。
太平洋戦争が終わった昭和20年には、焼け野原となった日本には420万戸もの住宅が不足していたとも言われています。
当時は深刻な住宅不足による戦後復興の需要のために大量の木材が必要でした。
しかし一定量しか育っていない国産木材だけでは、大きな需要に対応することが難しかったのです。

・国産木材を使いにくかった
戦後、国産木材の需要が高くなればなるほど、どうしても価格は高騰してしまいます。
手に入りにくい国産木材は価値が高くなり、ますます手に入りにくい状況が続いてしまいます。

さらに当時は国産木材の規格が統一されておらず、粗悪な木材も数多く取引されていました。
利用価値の低いものであっても、需要が高いことで取引がおこなわれていたのです。
しかしそのままでは住まいの材料として使いにくく、国産木材に手を出しにくいような状況になっていったのです。

・輸入木材が手に入りやすくなった
戦後の木材需要に対応するため、政府は昭和26年に丸太関税を撤廃し、昭和39年になると木材貿易の完全自由化によって木材輸入の拡大を推進しました。
国産木材が手に入りにくい状況で住まいに必要な木材の需要を満たすために、外国産の木材を輸入しやすくして、関税を撤廃することで外国産の木材を安く利用しようという考えです。

この法律の影響は大きく、林野庁によると(※2)昭和30年には国産木材が90%以上使われていたのが、平成14年には18.8%まで低下しました。
近年では人工林資源の充実などの影響により上昇傾向に転じており、昭和47年の42.9%以来半世紀ぶりに4割台へと回復しつつありますが、やはりまだまだ国産木材の利用が増えたとは言い切れない状況です。

地産地消で木材が使われにくくなった理由は、このように国産木材が使われにくくなったことが大きな理由です。
昭和42年にJAS(日本農林規格)が誕生したことで国産木材としての質が保たれやすくなり、近年では補助金制度などによって輸入木材と国産木材の価格差もほぼなくなりました。
これからは国産木材の利用が高まり、木材の地産地消にもつながっていくのではないかと期待したいところです。

●地産地消と地元職人で造る

地産地消の木材を使った住まいづくりには、地元職人の力が欠かせません。
とくに一つひとつの木材がもつ特徴や個性に合わせた住まいづくりを求めているときには、長い経験と確かな技術をもつ職人やその技術が必要です。

充実した森林資源である地域材を積極的に活用するようになると、地域材に触れる機会が多くなることで地元職人の経験を増やして、次世代の職人への技術を継承しやすくなります。
また地域材を使った建築物をメンテナンスするときにも、地元職人が能力を発揮しやすくなるのです。
適切なタイミングで定期的なメンテナンスが受けられやすくなればなるほど、それだけ建物の寿命が長くなり、過ごしやすい住まいになることでしょう。

地産地消の木材を使った住まいづくりは、地域そのものに活力を与えてくれるようになり、経済的な活性化や森林の循環、地域社会の連携などにもつながる非常に大切な事業であるといえます。
しかし国産木材の地産地消は、輸入木材の利用に比べるとまだまだ少ないのです。

地域材を積極的に利用することで、地域の人々のつながりが強くなります。また森の環境もよくなり、風土に合わせた住まいづくりもしやすくなるのです。
私たち竹内工務店は、「京の木で家づくり」をモットーに、地域に根ざした住まいづくりをしています。地域材を使った住み心地のよい住まいを探している方は、ぜひお気軽にご相談ください。

<参考URL>
※1一般社団法人ウッドマイルズフォーラム「木造住宅の木材輸送過程CO2排出量」
https://www.woodmiles.net/_files/chart/wmf_08.pdf
※2 林野庁 「令和3年度 森林・林業白書 第Ⅲ章 木材需給・利用と木材産業」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r3hakusyo/attach/pdf/zenbun-24.pdf

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