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屋上緑化という選択

屋上緑化という選択

ヒートアイランド現象という言葉をご存じでしょうか。
これは、都市部の気温が郊外に比べて高くなる現象を示す用語です。
たとえば東京都の場合、この100年で3℃気温が上昇しました。
東京周辺の郊外が1℃上昇しているのと比べると大きな変化であると言えます。
それでは、どうしてこのようなことが起こってしまうのでしょうか。
ここからは、ヒートアイランド現象を改善するための屋上緑化についてご紹介していきます。

緑が与える効果

人と緑の関係は、都市部に限ったものではありません。
緑が与える効果はさまざまです。

気持ちが安らぐ

緑色には人の気持ちを落ち着かせてリラックスさせる効果があります。
自然の多い場所にいくと、なんとなく安心する気持ちになることもあることでしょう。
緊張する気持ちを落ち着かせてくれるうえに、自然から抽出された成分をアロマテラピーなどで利用することもあります。

室内の大気を浄化する

建材に用いられているホルムアルデヒドや有機溶媒などはシックハウス症候群と呼ばれる症状を引き起こす原因になります。
室内に観葉植物を置くと、大気中にあるこれらの成分を減少させることが知られており、シックハウス症候群の発生抑制に有用と言えます。

温熱環境の改善

ヒートアイランド現象の改善に効果的なのが緑による温熱環境の改善です。
一般的な植物は、気孔を使って体内に蓄えている水分を水蒸気として外部へと放出(いわゆる蒸散)しています。
そのときに、気化熱として周囲の温度を下げる働きがあり温熱環境の改善に期待できます。

緑の環境に溶け込む

公園の数が減りつつある現代では、普段暮らす場所に緑が少ないと感じることもあるのではないでしょうか。
緑がある環境を保つためには、どのようなことをすれば良いのでしょう。

郊外などでは、昔ながらの自然が多く残っている場所もありますが、都市部だとなかなか緑を見つけることが難しいかもしれません。
そんなときは、緑を増やす状況を積極的に生み出すようにしてみるとよいでしょう。

「室内に観葉植物を置く」、「ベランダや庭先にお気に入りの花を飾る」など緑を普段の生活に溶けこませるようにすると、きっといつもとは少し違った生活を過ごせるようになるはずです。

室内に直接緑を置くことのできないこともあることでしょう。
トイレや玄関などに緑を置きたいと考えても、採光などの関係で実用的ではないこともあります。

もしベランダや屋上を利用できるのであれば室内ではなく室外へ緑を増やしてみるのも良いでしょう。
どうしても室内の緑化を進めたいときには、DIYなどで理想的な場所の確保に挑戦してみるのも楽しめるのではないでしょうか。

建築家 石井修

奈良県出身の建築家である石井修は、緑と人が共生できる住宅建築を多数手がけました。
屋上緑化という言葉が一般的に広まるよりも先に自宅の屋根に芝生を植えて緑の環境に溶けこむような建築を創っていたのです。

80歳を超えても建築家として精力的に活動されていましたが、残念なことに2007年に87歳でお亡くなりになってしまいました。
「最高の住宅の設計は、廻りに埋没する建物が良い、究極は、地下に埋まって地上には樹木がみえるだけの建物がよい」、
「建物と同じぐらいの熱意を周りの環境作りにそそいでほしい」という彼の想いは、今でこそ当たり前になった屋上緑化という考え方に大きな影響を与えているのです。

緑と人の関係性

古来より、緑と人には密接な関係があります。
木の実を食べて狩りをしていた時代から、お米や野菜を栽培している現代に至るまで人が生活している空間には緑があるのが当たり前でした。

しかし、産業革命や高度経済成長期をきっかけにして集合住宅がハイスピードで建築されるようになると都市部からは一気に緑が失われるようになってしまいました。
ヒートアイランド現象やシックハウス症候群などは、もしかすると失われてしまった緑を取り戻すきっかけになるかもしれません。

屋上緑化は、緑の環境を生活に溶けこませるための代表的な手段であるといえます。
忙しい毎日を過ごしている方やストレスが多くて日頃安らぎを感じることが少ない方などは、まずは日常生活で緑と触れあう時間を増やしてみてはいかがでしょうか。

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