襖の由来(歴史)、障子の由来
襖と障子は部屋の開口部についている木製建具のことです。
生活空間を遮断・連結する役割があるほか、風通しと採光を良くする機能を持ち合わせています。
襖の由来は「衾(ふすま)」で、体にかける布製の四角い掛布団を意味します。
襖の原形は板の衝立に絹織物を貼り付けたもので、平安時代には開け閉めができる形状の襖が存在していました。
障子は襖の100年ぐらい後の平安時代末に登場しました。
当時の障子は紙が貼り付けられた仕切りで、襖より簡単なつくりをしています。
高さは現在の障子の半分ほどで、人影が見えないようにするために利用されました。
鎌倉時代になると和紙が量産され始め、障子が普及しました。
細い枠に和紙を貼り付けたもので非常にもろく壊れやすかったため、当時のものはほとんど残っていません。
紙を用いるところは現在の障子と変わりませんが、昔は紙が高級品であったため、しばらく一般民衆には普及しませんでした。
江戸時代中盤に入ってようやく紙の供給が安定し、一般的に障子が用いられるようになります。
今でも障子は和風建築には欠かせない存在です。
襖の制作(下地や枠等)、障子の制作
襖と障子は一見シンプルなつくりですが、伝統的な製法で作ると製作工程が多い建具です。
襖はまず骨組みから作られます。
縦組子と横組子をますに組んだ組子に紙を貼付けてゆきます。
手すき紙、茶塵、桑塵などの和紙を複数重ねるため、手間がかかる作業です。
下地が出来上がったら、一番上の仕上にはふすま紙を貼ります。
ふすま紙の素材は和紙や絹、麻などの布です。
最後に縁と引手を取り付けて完成です。
襖は障子より閉鎖性の高い箇所に用いられ、収納の扉や部屋の開口部に取り付けられます。
続いて障子です。
現在の障子は「明障子」と呼ばれるものです。
骨格部分が湿気や乾燥でゆがまないように、収縮しにくい木材であるスギ、ヒノキが用いられます。
スギ、ヒノキは高価な素材のため、最近ではスプルースという加工性の高い安価な輸入材を使うこともあります。
枠に用いられる組子は1本1本独立した細い棒です。
外枠は框(かまち)と呼ばれます。
木材の組子は互いの材を欠込んで組合せる相欠きといわれる方法で組み立てられます。
その木枠と組子に障子紙を貼ったら、障子の完成です。
障子紙には手すきと機械すきのものがあり、手すきの紙はやや高価です。
最近ではレーヨンやプラスチックを用いた化学合成繊維の破れにくい障子紙も登場しています。
引手や金具、襖紙や障子紙
襖と障子の素材には木材、紙、金具などが用いられます。
一般的に襖と障子はいたってシンプルな造りをしていますが、作り手や住む人の意匠、美意識を表現できる部分でもあります。
通常、襖の引手は円形か長方形をしていますが、様々な形と素材の引手が存在します。
光琳梅、竹節、立鶴、千鳥、瓢箪などの形をしたユニークな引手は遊び心があり、目を楽しませてくれます。
引手の素材には陶器や漆塗りもあり、京都ならではの引手として清水焼を用いられていることもあります。
蝶番や釘隠などの金具は植物や昆虫、家紋などのモチーフを取り入れることで、趣向を凝らすことができます。
襖紙と障子紙も様々な種類があります。
襖紙は大別して和紙と織物が用いられます。
和紙には手すきと機械すきがあり、手すきの和紙は上等とされますが下地を貼る際に注意が必要とされます。
織物には絹やレーヨンなどの糸が織り込まれています。
織物の襖紙は耐久性に優れています。
襖紙は素材と品質、図柄によって価値が決まります。
障子紙も手すきと機械すきの製品があります。
手すきは楮(こうぞ)という植物を使い、伝統的な製法で作られます。
機械すきの障子紙の素材は楮、レーヨン、パルプ、プラスチックなどです。
障子紙は劣化するので張替えが必要になります。
価格をはじめ建物の雰囲気、通気性、耐久性、採光性などを比較して用いると良いでしょう。
襖のいろいろ(これからの襖は?)
平安時代から用いられてきた襖は和風建築には欠かせない建具です。
本襖は伝統的な製法で作られ、複数の工程を重ねて仕上げられます。
絵柄や紋、壁画、金箔を施した襖は美術品でもあります。
明治時代に入り、西洋文化の流入で和洋折衷の住宅が普及し、襖の絵柄も和風と洋風のデザインが用いられるようになりました。
今でも一般住宅の建具として襖は活躍しています。
本襖は下地の貼り付けに手間がかかるため、最近安価な物では、段ボールや発泡スチロール素材が下地に使われることもあります。
アルミ素材の襖も登場しました。
近代の襖は量産できて便利である一方、和紙の柔らかな風合を出すことが困難な点は否めません。
襖の使用が減少傾向にある昨今ですが、元来襖は日本の気候・風土に適しています。
建物の意匠により、京唐紙を使った襖等も最近見直されて使われる機会が、増えてきています。
個人ライフスタイルや好みに合わせて、使い分けると良いでしょう。
最終更新日:2020年3月4日投稿日:2019年3月22日