住まいと灯り

日本の灯りと歴史

昔日本には今のような電灯や照明がありませんでした。
灯りの最古の歴史は縄文時代に遡り、木をこすり合わせたり、石を打ち合わせて火を起こしたものを灯りにするところから始まります。
そして、原始的な火おこしから油、松やになどの自然素材を使った灯り、ろうそく、ガス灯、照明の灯りへと次第に移り変わっていきます。
日本の灯りの歴史は諸外国に比べると進展が遅く、大和時代に魚油を使って火をともす灯りが登場しました。
当時火の灯りは貴重であり、神事で特別に使用されるものでした。

奈良時代に入ると、仏教の伝来とともに外国の文化が流入してきました。
油で火を灯すほか、ろうそくを用いるようになりました。
平安時代になると、荏胡麻(えごま)の油も使用されるようになります。
街灯が出てきたのは江戸時代からです。
日没後にも出歩く人が増え、旅人が迷わないようにするために、木灯籠や石灯籠が設置されるようになりました。
植物油を用いた行灯やろうそくなども室内や持ち運び用の灯りとして使われました。
1860年以降は石油ランプも徐々に広まりをみせます。

明治時代になると都市に街灯が置かれるようになり、初めてガス灯が普及しました。
1871年に大阪市の造幣局に日本で初めてのガス灯が点灯し、翌年の1872年には横浜市でもガス灯が作られています。
また、明治維新により欧米の技術が取り入れられるようになり、大正時代には白熱電灯、蛍光灯が使われるようになり、ガス灯は次第に姿を消すようになりました。

昭和時代にさしかかると、現在と変わらない電気事情になります。
LEDの実用化は1990年代以降となりますが、安定して電力供給がある環境になり、非常に便利になりました。

世界の灯りと歴史

続いて世界の灯りの歴史です。
日本と同じように、木や油などの自然素材、ろうそくを用いた後、ガス灯、照明が普及しましたが、日本の灯りの歴史より早い発展を遂げます。
ろうそくは紀元前1500年代の古代エジプトですでに使われていました。
ツタンカーメン王の王墓からは燭台が出土しています。
古代から中世にかけては魚油や植物油などを陶器の器に注ぎ、灯芯を載せて火を灯していました。
捕鯨する地域ではクジラの油も使われています。

1800年代になると目まぐるしく灯りの在り方が変わります。
まずはガス灯の登場です。
1792年にスコットランド人のウィリアム・マードックが石炭を蒸し焼きにすることでガスを発生させてガス灯を発明しました。
当初ガス灯は上流貴族の間でしか普及せず、一般的にろうそくが主流でしたが、1812年に世界初のガス会社がイギリスのロンドンに設立されて欧米にガス灯が広まりました。
それから、1879年にトーマス・エジソンがフィラメントを発明したことにより、白熱電球が実用化しました。
このフィラメントの実用化には日本で馴染みのある素材が大きく貢献しています。
当時、フィラメントは炭化した紙が用いられて、1分程度しか持続しませんでした。
そこで、エジソンはフィラメントとして長時間耐えられる素材を探したところ、竹が適していることに気が付き、京都の八幡男山近隣の竹を使って実験したそうです。
また、エジソンは発電・送電システムの発展にも寄与しました。
続いて1900年代になると蛍光灯が発明されます。
1856年にドイツのハインリッヒ・ガイスラーが蛍光灯の起源を生み出し、1926年にエトムント・ゲルマーが応用して蛍光灯の発明をしました。
1930年にアメリカのゼネラル・エレクトリックがゲルマーの発明の特許を買取り、蛍光灯の発売を開始し、世界中に広まりました。

灯り(照明)の計画

日本と世界の灯りの歴史を辿ってきましたが、現在は白熱灯、蛍光灯、LEDが主に使われています。
住まいやテナントを構え、照明のプランニングする際はそれぞれの特徴を知っておくと便利です。
そこで、白熱灯、蛍光灯、LEDの特徴を紹介します。

白熱灯
黄色味のある温かい電球色です。
電球の寿命は短く、発熱量が多くて電気代が高くなる傾向にあります。
蛍光灯
色は昼光色、昼白色、電球色があります。
電球の寿命は長く、電気代は白熱灯に比べて経済的です。
冬などの低温時になると、明るくなるまでに時間がかかることが欠点です。
LED
色は昼光色、昼白色、電球色があります。
寿命がとても長く、白熱灯の約20倍も持ちます。
電球自体の価格は高めですが、電気代はあまりかかりません。
また、電球が急に切れたり、チカチカと点灯することがなく徐々に暗くなるので、取り換え時期が分かりやすいのも良いところです。
LEDは赤外線や紫外線が含まれていないため、照明で照らされる対象物が傷みにくいメリットもあります。
家屋やインテリアの変色や色褪せを防ぎたいときに適しています。

自然光と人工の灯り

ここまで人工的な灯りについてお話してきました。
しかしながら、自然光もとても重要な役割を果たしています。
建物の場合、日の光がないと湿気がこもってしまい、カビが生えやすくなってジメジメします。
人は日の光を浴びることで、睡眠サイクルを作ったり、メンタルを保つことができます。
太陽の光を浴びないと、気分が晴れずうつ病などにもかかりやすくなります。
自然光は生活リズムを整えて心身ともに健康的に暮らすために大切です。
住まいづくりをするときは陽当たりや採光を意識して、間取りを決めることが重要になります。
自然光が入りにくいときは吹き抜けを作ったり、光を通しやすい白色の壁を取り入れることで工夫できます。
また、人工の灯りも生活に欠かせない存在となってきました。
先ほど灯りの計画で出てきた白熱灯、蛍光灯、LEDを使い分けるほかに、電球の色を効果的に使うことが大切です。
電球の色は主に昼光色、昼白色、電球色があります。
昼光色は寒色で青みのある光で、色温度が高いです。
色温度が高いと活動的な印象を与えます。

昼光色は集中したいときに使いたい色で、勉強部屋や作業部屋にふさわしい色です。
昼白色は3色の中で一番自然光に近い色になります。
肌の色が自然の状態で見えるので、メイクをする洗面室などに適しています。
電球色は温かみがあるオレンジがかった色で、安らぎを与えます。
家族で団らんするリビングや食事をするダイニングに取り入れたい色です。
それぞれ用途に応じて使い分けると有効的ですが、お部屋を様々な場面で使用することもあるでしょう。
その場合、調色機能がついた照明器具を使うと明度を調節できて便利です。
自然光、人工の灯りはいずれも私たちの生活に必要不可欠なので、上手く取り入れられるようにしましょう。

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最終更新日:2020年3月4日投稿日:2018年8月31日