民芸・陶器について
今年は、「民芸」という言葉をよく耳にされたり、またTVや雑誌に特集記事が掲載されて目にされたりすることも多いと思います。
「民藝」という呼び名をつけた柳宗悦(むねよし)その人は、白樺派(雑誌、白樺)と言われる人たちと交流をする人(雑誌―白樺の同人)であり、ロダンの彫刻の展示を通じて、ロダンの彫刻を見に来た浅川伯教(朝鮮陶器史研究者)が手土産に持参した朝鮮陶器の素朴な美に魅せられて「民芸」という呼び名が生まれました。
「民芸」から日本各地の郷土品の数々が、クローズアップされ見直されてきています。
「民芸」は「民衆的工芸」の略称で、その始まりは今から90年以上前に遡ります。
1920年半ばの大正時代、工芸の世界では華美で煌びやかな装飾が主流でした。
ところがそうした装飾品は高価であり、外形上の美しさはあるものの、実用性がなく、富裕層である一部の人たちだけの嗜好品とされていました。
そこで、柳宗悦・河合寛次郎・濱田庄司らが中心となって、名の知れない職人が作り出した日常的な生活用品を「民芸」と呼び、
地域の風土に根差した文化、一般大衆の生活に親しみのある手仕事にこそ美しさがあると提唱しました。
伝統を重んじ、歴史で培ってきた叡智と土地が育んだ自然にこそ、健康的な美が生まれるという発想です。
民芸を広める活動を民芸運動と呼び、後に濱田庄司は人間国宝に認定され、数々の民芸品は重要文化財などにも認定されました。
このように民芸は工芸史上の歴史に大きな影響を与えています。
民芸品とは(民芸品と呼ばれるもの 陶器、生活雑貨、家具、織物、建築)
先ほどお話した民芸ですが、あまり民芸品に馴染みがないように思われるかもしれません。
しかし、民芸品は私たちの暮らしと関わりが深く、いたって平凡な存在です。
民芸品の特徴は、
- 実用的であること
- 大量生産できること
- 廉価であること
- 地域性が高いこと
- 個を重んじず無名であること
- 伝統的であること
などが挙げられます。
民芸は陶器、生活雑貨、家具、織物、などに取り入れられています。
特に、「民芸」という名の基になった陶器ですが、元々の朝鮮陶器が現在の日本の陶器に多大なる影響を与えていることは否めません。
特に日本の各地方で焼かれている陶器の各地方のそれぞれのものにその影響をみることができます。
また、民芸運動の基となった人たち、濱田庄司、河井寛次郎、そして英国のバナード・リーチの影響も多大です。
バナード・リーチとスリップウェア
スリップウェアとは、赤土で成形された素地に化粧土(スリップ)で文様を描いて仕上げた陶器で、オーブンが使用できる耐熱容器や器のことです。
17世紀の英国で原型ができ、元はパイ皿として使われていたものが産業革命後にすたれていたのを、バナード・リーチがイギリスの南西部に突き出た半島の港町のセント・アイブスで登り窯を作り、スリップウェアを復活させました。
濱田庄司もリーチが帰国する時に共に渡英し現地で作陶に励んでいます。
スリップウェアの魅力を見出した先駆けの日本人が、柳宗悦であり、濱田庄司、河井寛次郎、富本憲吉、そして日本で民芸の影響を受けたバナード・リーチも渦中の人でした。
これらの人たちは、いずれもスリップウェアを作陶しています。
現在においても、日本のあちこちでスリップウェアが作られ続けています。
美しい陶器の魅力は、万国共通で私たちの心をとらえて離しませんね。
最終更新日:2022年4月1日投稿日:2022年4月1日