住宅は木造で、大店舗や施設を建てるなら、鉄骨やコンクリートが一般的だと考えている方は多いのではないでしょうか。
しかし最近では、木造建築による商業施設が増えてきています。
ここでは「木造で施設を建てる」を考えてみます。
●施設・商業建築を木造で建てる
木造建築は環境だけではなく利用する人にもやさしい空間を生み出します。
近年では、お店や施設を訪れる方の心地よさを大切にしたいという考えから、木造の価値があらためて見直されています。
もちろん事務所で働く方の快適さも見逃せません。
ここでは「自然素材が生み出す心地よさ」、「環境に配慮した建築素材」、「地域とのつながりを作る」ことについて、考えてみます。
・自然素材が生み出す心地よさ
木の香りや手ざわりは、人の五感に心地よく働きかけます。
木造建築(木材)には湿度を調整する働きや、優しい手触り、足ざわり、又音を和らげる効果もあるため、静かで快適な空間づくりに適しています。
ストレスを減らして集中力を高める効果も期待できることから、顧客が多く集まる店舗やオフィスにも適した素材です。
・環境に配慮した建築資材
再生可能な資源であり二酸化炭素を吸収・固定する木材は、建築資材の中でも「地球にやさしい素材」だと言われています。
製造時のエネルギー消費が少なく廃材も再利用しやすいため、持続可能な社会づくりにも貢献できます。
そのため環境に配慮した建物を作る素材としても、木造の建築が注目を集めているのです。
・地域とのつながりを作る
木造建築において、とくに国内産の木材を使うようにすると国内における山や森林の保全にも貢献できます。
また、建築予定地域の工務店や職人と協力することで地元の経済にも貢献できるのも木造建築の魅力であり、地域のまちづくりにも貢献します。
●施設・商業建築の構造
店舗や施設などの大きな建物には、一般的な住宅とは異なる「広さ」や相反する「安全性」といった条件が求められます。
昔は木造で再現することが難しいとされた構造も、現在では多様な方法により対応できるようになってきました。
ここでは「施設建築に求められる設計」、「目的に合わせた工法の選び方」についてご紹介します。
・施設建築に求められる広い空間と安全性
保育園や介護施設、店舗などではゆったりとした開放的な空間が必要になるかもしれません。
そのような広い空間を確保するためには柱と柱の間を広くする必要があり、専門用語では「大スパン」と呼ばれる方法が用いられています。
以前は木造建築だけで大スパンを実現することは難しいと言われていました。
しかし近年では「CLTパネル工法」や「木質ラーメン構造」等新しい技術と工法によって、木材でも広々とした空間づくりが可能になっています。
木造建築の安全性には、耐震性や耐火性も大切です。
そのため、構造計算に基づいた耐震(構造)設計が必要です。
木材を加工して燃えにくくした「不燃木材」や「準不燃木材」を使用することで、耐火性能を高めるという方法もあります。
・目的に合わせた工法を選ぶ
施設建築では、建物の用途や設計の希望に合わせてさまざまな工法を使い分けます。
ここでは代表的な工法である「CLTパネル工法」、「木質ラーメン工法」、「軸組工法」の特徴などをご紹介します。
「CLTパネル工法」
厚い板状に加工したCLT(直交集成板)と呼ばれるパネルを壁や床、屋根に使用する工法です。
事前に工場で大きなパネルを加工しておくため、現場での作業が少なくて済み、工期の短縮につながります。
耐震性や断熱性にも優れており、安全性の高い建物づくりに向いています。
が、製作する工場が限定されているので施工場所が遠い場合不利となります。
「木質ラーメン工法」
接合部に特殊な部品を使って柱と梁をしっかりと組み合わせて、構造を支える工法です。
鉄骨造に近い大空間を木材で実現するもので、大スパンの空間設計にも対応できます。
斜め材になる部材が不要なため、デザインの自由度が高くなり、インフィル・スケルトンの柔軟な空間設計が可能です。
「軸組工法(在来工法)」
木と木を組み合わせて柱や梁といった骨組み(軸組・ポスト&ビーム)で構造体を造るという在来の技術を活かした工法です。
地域の流通材(乾燥材)品質の確認された無垢材を特殊金物を使って大空間を作ることが出来ます。
細やかなデザインや複雑な屋根形状にも対応できる柔軟性があり、木のぬくもりや美しさを感じられる空間づくりに向いています。
設計の自由度が高く、地元の施工者で造るリフォームしやすい方法といえるでしょう。
但し設計については、設計者(意匠、構造)の技量にゆだねられます。
建物の用途やデザインの希望に合わせてこれらの工法を適切に使うことで、自由度の高い設計が実現できます。
施設や店舗に求められる安全性を満たしながら、木の温かみを活かした空間づくりができるのも木造建築ならではの魅力と言えるでしょう。
●SE構法で広がる木造の可能性
「SE構法(Safety Engineering構法)」とは、構造の強さと大空間の自由度を両立する可能な木造建築の一つの方法です。
木のぬくもりを大切にしながらも、大空間や高い耐震性を実現できるため、次世代の木造建築工法として多くの施設で採用が進んでる工法の一つです。
ここでは、SE構法の特長や魅力についてご紹介します。
・科学に裏打ちされた構造で、木造に広がる自由な空間
SE構法は、使用する木材(大断面集成材)と特殊金物を使用して接合部を剛構造とする方法で、構造計算(許容応力度計算)に基づいて設計され建設される工法です。
これにより、これまで木造では難しいとされていた大空間や複雑な形状の建物にも対応できるようになりました。
SE構法で使用する木材には、すべて「構造用集成材」が使われています。
構造用集成材は、科学的な計算をもとに人工的に作られた素材です。
素材ごとに強度が示されているため、建築材として品質、強度を担保された材で強度の高さや性能が求められる建築に向いています。
・自由なレイアウトで、事業にも長く寄り添う建物へ
柱や梁を高精度な金物でしっかりと接合するSE構法は、耐震性・耐久性にも優れた建物を実現できます。
大スパンの空間がとれるためプランの設計の自由度も高く、スケルトン・インフィルで考えると将来的なリフォームや増改築にも柔軟に対応できます。
ライフスタイルの変化や事業展開にも対応しやすい建物です。
柱や耐力壁が少なくても安定した構造を保てるため、広く開放的な空間づくりが可能です。
そのため保育園や多目的ホール、カフェやショップなどの自由なレイアウトが求められる施設に使用されています。
・施設建築で広がる、SE構法の採用実績
安全性や快適性が求められる施設建築において、SE構法には、多くの実績があります。
たとえば、「無印良品(Muji)」の一部店舗では、木のぬくもりと開放感のある空間を実現するためにSE構法が採用されました。
また福井県にある「ESHIKOTOサイモン棟」は、店舗兼倉庫として老舗酒造によって開設され、木造平屋建てのSE構法によるデザイン性と耐震性を兼ね備えた施設づくりが高く評価されています。
当社竹内工務店でも、SE構法による家づくり・施設づくりに取り組んでいます。
たとえば、京都市下京区で建築された「K邸新築工事」では、1階にビルトインガレージを備えたSE構法の建物を現在施工中です。
完成前には完成見学会も実施する予定です。
構造の強さや美しさを実際にご覧いただける貴重な機会となります。
弊社では耐震性とデザイン性を兼ね備えたSE構法の建築を始めとして、木造建築の可能性をこれからも広げてまいります。
これからの施設建築に求められるのは、機能だけではありません。
木造建築のように人と地域、そして環境にもやさしい建物づくりが、ますます大切にされる時代となってきているのです。
木造建築は、自然素材ならではのあたたかさに加え、高いデザイン性や構造的な安心感、環境への配慮まで対応できる方法です。
SE構法をはじめとした高度な木造工法によって、「広さ」や「強さ」、「自由な設計」を兼ね備えた空間づくりも実現できるため、これからの施設建築にふさわしい理想のかたちと言えるでしょう。
竹内工務店では、木の魅力と確かな技術を活かした施設づくりをお手伝いしています。
構造や工法に関するご相談から設計・施工まで丁寧に対応いたします。
木造建築のお店や施設にご興味がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
お客様の想いを形にする、木の香やぬくもりにあふれた空間づくりをサポートいたします。
最終更新日:2025年4月24日投稿日:2025年4月24日