「京の老舗」という言葉は耳にしたことがあっても、本当はどういう意味合いなのか実はあまり分かっていないという方も多くいらっしゃるではないでしょうか。
京都府では、長年にわたって家業の理念を守りながら伝統の技術・商法を継承し続ける企業を「京の老舗」と呼んでいます。
それでは全国的に認知されている「老舗」と「京の老舗」の違いを以下でご紹介します。
●老舗とは
一般的に、同じ商売を代々続けているお店や、先祖代々の家業を守り続けている格式や信用のあるお店を指しています。
何年以上家業を続けていると老舗と呼ばれるのか明確な決まりはありませんが、創業から30年以上の企業を老舗と指しているケースが多いようです。
ただし、IT業界や営業など新しくて企業の入れ替わりが激しい業界の場合は、10年程度でも老舗とするケースもあります。
老舗の言い換えとして、格式・伝統・由緒といった言葉がありますが、全く同じ意味合いの言葉はありません。
中でも伝統や由緒は、長く続くお店や長い歴史を持っているという意味があるため、老舗企業とまではいかずとも代々続いている企業に使う言葉です。
●京の老舗とは
京都府には「京都老舗の会」という団体があり、老舗企業のブランド力を強化・京都の地域経済の活性化を目的に設立されました。
京都老舗の会は、府内大学以外にも京の老舗の受彰企業が会員となれます。
京の老舗は、一般的に知られている老舗の概念とは違い、しっかりと条件が決まっています。
表彰条件は、以下のとおりです。
・同一の業種で100年以上営業を継続
・主たる事務所が京都府内
・営業継続時に訴訟やその他紛争の当事者になったことがない
・知事の表彰
業歴が100年以上でないとしても、同等の業歴を有していると認められると表彰対象となります。
昭和43年からスタートした京の老舗表彰は、企業として名誉あるものなので多くの企業が目指しています。
京都には、伝統産業と呼ばれるものが数多くあり、清酒業や京漬物・菓子などが有名です。
酒造りに適した良質な地下水に恵まれている京都では、平安京が造営された頃から清酒造りが始まったと考えられています。
京漬物や菓子は、原料を可能な限り京都産を使用して、製法も昔ながらの伝統的な製法を守って作り続けられているのです。
そのほかにも、以下の伝統産業は老舗企業がほとんどだといえます。
・染織
・諸工芸(仏具など)
・小規模産地
・食品
・建築
京都の場合、伝統産業ではない業界でも、長く1つの業種を極め歴史が100年以上ある企業が多く存在しています。
古くから都があり、歴史的な建造物も数多くある京都だからこそ、老舗企業も根付くのでしょう。
京の老舗表彰を受彰するためには、手続きが必要です。
業界団体の長等が書いた推薦書、100年以上の歴史があり、継続して営業していたことを証明する物件の写しを会の事務局へ送付する必要があります。
申請した後、府の職員による訪問・納税状況を調査した上で表彰されるかが決まります。
簡単に決定するのではなく、調査した後に京の老舗表彰意見聴取会議でさらに審査された後、表彰企業が決定します。
とても由緒ある受彰なので、しっかりと時間をかけて決まるのです。
申請書などは、例年5月中旬に配布され、6月中旬頃までに申請します。
不明点がある場合は、京都府商工労働観光部染織・工芸課のウェブサイトで問い合わせなどが可能です。
竹内工務店も建設業として創業明治45年の歴史ある企業で、京の老舗に申請をおこなっています。
●京都老舗の会とは
京都老舗の会は、京都ならではの事業を長く継続して次世代に承継していく秘訣を全国に広めることが目的です。
産学公が連携して、老舗の経営哲学の研究や企業努力を国内外に広く発信していき、京都企業の信用力やブランド力を強化することを目標としています。
そのため、京の老舗に表彰された際は必然的に歴史が長く由緒ある企業として府民から認識されるでしょう。
京都老舗の会は、以下の活動をしています。
・共同研究
・情報発信
・相互交流
共同研究というのは平成24年から龍谷大学と連携して、京都の老舗に伝わる経営理念や時代変化や存続危機対応などの講義をしています。
老舗企業の知恵を学び、この先も企業がしっかりと継続できるように講義を受けられます。
情報発信というのは、ホームページやニュースレターの発行や老舗の真髄展を指しています。
老舗の真髄展は、京の老舗企業が持つ「知恵の経営」を多くの地域に発信するための催しです。
百貨店やホテルなどで、京都老舗の会や老舗企業の紹介パネル展、職人が使っている道具などを紹介しています。
また、近年ではフォーラムを開催し、企業の継続や地域経済との関わりを考える機会を設けています。
伝統産業を築く企業の社長や老舗旅館の主人など、多くの老舗企業社長や取締役が講演会・パネリストとして参加しています。
それぞれがコーディネーターとして、パネルディスカッションも実施されているので地元企業の経営者など多くの人が参加します。
さらに京都老舗の会総会と併せて経営事例を勉強できる交流会も実際されています。
例年、しっかりと勉強会のテーマが決められていて、老舗企業の取締役がパネリストとして登場する点が大きな特徴です。
京都老舗の会総会では、毎年「京の老舗」として表彰された企業の加入式がおこなわれます。
名誉ある表彰であり、京都老舗の会に加入していることは企業として多くの方にアピールできる部分なので、加入を目指したい会です。
●京都老舗の会会員になると
歴史ある企業として認められ、京都老舗の会会員となった際はシンボルマークを使用可能になります。
京都老舗の会シンボルマークは、京都ブランド推進をする目的で使用ができます。
ただ、むやみにシンボルマークを使用するのではなくてきちんと定められた使用規定に基づいて使用をしなければなりません。
・京都老舗の会が主催・協賛・後援している取り組み
・会員などが行う京都ブランド普及啓発のための取り組み
上記の取り組みのために、例えば名刺や企業ホームページにシンボルマークを印刷・掲載することが可能です。
使用料は不要ですが、マークを使用する際はあらかじめ京都老舗の会事務局に届け出が必要です。
京の老舗の大きな特徴は、働くこと・継承することによって多くを学び、成長する機会を得られるという点です。
ただ長く経営しているわけではなく、しっかりと働く人を育てる環境に優れ、京の老舗で働いた経験は今後の社会人生活に大きな影響を与えます。
京の老舗の場合、あらゆるケースに対応できる基盤やサービス・開発力があるため、しっかりと市場で戦えるでしょう。
周囲にも同じような老舗企業が多いので、京都老舗の会会員同士で支え合っている企業もたくさんあります。
このように、京の老舗は100年以上の歴史が古い由緒ある企業が加入できるため、信頼とブランド力のある企業としてアピールできます。
老舗の企業は、多くの場合が成熟した組織として認識されるため、府民を含めた多くの方から信用してもらえるでしょう。
弊社も京の老舗に申請しているため、より一層皆様から信頼される企業として活動していきます。
老舗企業が数多く存在している京都では、老舗であることよりも企業として誠実に運営してきたことが重要視されているのです。
そのため、京都老舗の会でも会員加入を認めるかどうかの審査の段階で慎重になります。
信用できる企業の証として、京の老舗はあると思ってください。
最終更新日:2023年10月26日投稿日:2023年10月26日