近年さまざまな業界で社員の教育や資格取得などが推奨されています。
おそらく業務内で活用する場面以外にも、自己研鑽目的で積極的に取り組まれている方も多いのではないでしょうか。
社員の能力を高めることは、グローバリゼーションな社会における人材の育成に関しても重要です。
欧米各国では、早くから技術者に対する継続教育制度(CPD(Continuing Professional Development)が導入、活用されてきました。
日本においても、さまざまな業界でCPDが導入されてきています。
今回は、このCPD制度について紹介します。
CPDとは
CPDは、日本語で「継続的職能開発」、つまりは「技術者の継続教育」を意味しています。
国際社会と密接にかかわる業界や専門的な業務内容などとくに積極的に取り組むべき課題があるときには、専門分野に加えて幅広い技術の習得が必要不可欠です。
CPDは多くのプログラムの中から、一人ひとりが求めているニーズに合わせたプログラムを受講できるため継続的に幅広い技術を習得できる制度といえます。
建設業以外のCPD
CPDは建設業だけでなくさまざまな業界で導入されています。
例えば教育関係では基礎、開発、熟練、専門家などの段階に分けて、それぞれで必要とされる知識や技術をチェックリストで評価しています。
また授業のマネジメントや能力開発に関するセミナー受講により、教師として継続的な技能向上の枠組みとしてCPDを利用しているのです。
CPDは他にも行政機関、デジタルを扱う業界、ジュエリー業界など、多種多様な業界で活用されています。
とくにグローバルにかかわる機会が多い業界では、新しい知識や技術を習得するためにCPDの活用が求められているのです。
建設業のCPD
2001年に改正された技術士法により、CPDが技術士の責務として明記されました。
また2021年4月の文部科学大臣通知および同年9月の文部科学省省令改正により、技術士CPD活動実績の管理・活用に関する公的な制度が始まりました。
建設業のCPDでは、建築士、土木施工管理技士、建築施工管理技士などが対象です。
このような有資格者がセミナーや講習会などを受講することで、「CPD単位」が受講者に与えられます。
技術者の資格によっては、定期的な更新制度が設定されていないものもあります。
そのためCPD単位の取得による継続的な技術教育が求められているのです。
CPD単位の取得目的は、個人としてはスキルアップやキャリアアップ、自己研鑽などが挙げられます。
また自分のスキルがどのくらいのレベルにあたるか図る指標にもなりえます。
例えば他社にいる技術者との交流において、自分の技術レベルを把握しやすくなることもあります。
会社としてCPD制度を活用する目的は、なにより公共事業の落札率に影響しているためではないでしょうか。
建設系CPD協議会に加盟している各団体により認定された「CPD単位」は、公共事業の落札方式における評価方法に設定されています。
自社に勤務している有資格者の人数に加えて「CPD単位」が加点対象とされているため、CPD単位の取得を推進することにより対応できる仕事の幅も広がっていくと考えられます。
これからのCPD
さまざまな業界で活用されているCPDですが、これからはさらにその役割が大きくなっていくことでしょう。
新型コロナウィルスの影響で、オンライン配信などこれまでとは異なる学びの場所も増えており、CPDに参加しやすい環境が整いつつあるのです。
とくに建築業界では、人手不足や高齢化などの影響により各技術者の技術継承が難しい場面も考えられます。
技術に不安を感じる技術者はCPD対象のセミナーや講習会に参加して、積極的にCPD単位の取得を目指すと良いかもしれません。
また工務店や企業としても、社内研修が整っていないときや教育できる社員が不足している場合などにCPD制度を活用できるはずです。
もちろん「配置予定技術者」において「CPD制度」の配点が設定されているため、多くの行政機関における公共事業の落札を目指すときには自社社員をCPDに参加させるべきでしょう。
これからのCPDは、個人と企業が手を取り合って幅広い技術や知識の習得・向上を目指すことにより、地域社会に貢献できる有用な人材を積極的に活用できるように努めていくことが必要といえるのではないでしょうか。
最終更新日:2022年8月9日投稿日:2022年8月9日