ウッド・ショックと現在の京都の木材の流通と価値を考える

現在京都の山には伐採できる適齢木(50年以上の立木——住宅に使用する最適な材)はおよそ2,000万m3、毎年2%の増分だけでも40万m3の蓄積があり、これは1軒30坪の広さの住宅に使用される木材量(製材品)の20m3でいえば1万戸分に相当する。
他県に供給できるくらいの林産地であると言える。
木材資源は十分にありながら(実際の生産量は15万m3—京都府HP)素材として活かしきれていない状況である。

 流通段階において中径木を主とした材の需要(並材優位の流通構成)が木材価格の低価格化を推し進めていることが指摘されている。
A級材の需要が低い事、消費側の材への要求が価格の低いB級材、針葉樹ベニヤやチップ材に使用されるC級材に偏っている。
これらの要因が立木の低価格化を進め、山主に不利益を与えている。
その結果、山主は山や立木を伐採して市場に出す事ができなくなってきている。
(立木が購入・伐採されて残る利益はほとんど残らず、山主に還元されていない状況であり、山の関係者は林業に意欲を失っている。)

一方木材業界においては、家づくりの変化、クレームの少ない工業化された商品の販売が増え、無垢材や国産材、地域産材の販売機会が減っている。
地域材で家を建てたいという需要もあるが、相対的な流通量が少ない事や、ストック量が少なく納品に時間がかかるという問題があり、地域木材の使用が難しいといわれる。また、木材の乾燥や強度が(一部を除いて)明確に表示できてない等の供給側の問題もあり、木材の材の品質の担保が出来てないという面で、工務店や材木店など使う側からの地域材への信頼が得られていない事としてあらわれている。

作り手からみても、消費者の嗜好が変わってきている事や、かつての桧材の至上神話が崩れ、無地の木材が持つ高級感等への嗜好が薄れてきている点や、木材を見せない大壁工法の住宅が増えているという仕様の変化が大きい。

住宅づくりにおいて国産材を使用しない大手中堅ハウスメーカーが伸びてきている事も大きな原因でもある。
これらハウスメーカーの広報に比べて、地域材を使う地域密着型の住まいづくりの作り手が住まい手(消費者)に対して訴求力が弱い事も見逃せない。
 木材の消費される環境が川上から川下へそれぞれの側において問題を抱えそれらをうまくつなげる事(解決)が出来ていない。木材を取り巻く消費の負の循環に陥っており、山の荒廃や林業衰退を進めて、将来においてもこれらが自立的に改善されるとは思われない状況に至っている。

適齢木の伐採を行なわないと新たな植林ができない。植林が出来ないと次世代につなぐ木材資源が枯渇してしまう。
今日の林業の衰退を見逃せば、山の荒廃を新たに生み出し、将来の豊かな日本の農山村の風景もまた崩れてゆく事になるだろう。

これらを防ぐ為には、山の資源としての立木を持続する消費へとつなぐ事が必要であることは言うまでもない。
京の山から町へ木材の消費を結ぶ地域産材の利用拡大の思いを持つ人たちでまず課題の解決への行動を一歩進めたい。

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最終更新日:2021年6月16日投稿日:2021年6月16日